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「ロックで学ぶ現代社会」rock meets education

第2部 『現代の政治・経済とわたしたちの生活』

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第2章 社会保障と国民福祉

*Aさん 「税金を納めるのは国民の義務だけれど,それがどのように使われるかによっては払うのがいやになることがありますね。」

*B 君 「本当にね。福祉とかに使われるのならいいけれど,戦闘機買ったり不良債権を処理したりするのに使われるのだったら,ちょっとね…。」

*大 坂 「やがて納税者となる君たちにはそのへんのこともきちっと押さえておいてもらいたいものだけれど,今日はその『福祉』のことについて話をしたいと思う。」

*Aさん 「福祉と一口に言っても,いろんな問題がありますね。」

*B 君 「そうそう,障害者の人に対するものとか,幼児に対するものや,最近は,老人福祉がクローズアップされていますね。」

*大 坂 「そのとおり。で,今日は特にその"老人福祉問題"について考えてゆこうと思う。国連の定義によると,65歳以上の"老年人口"が7パーセントを越えると『高齢化社会』,14パーセントを越えると『高齢社会』と呼ばれるそうなんだが,実は日本では1995年にその14パーセントになっているんだよ。」

*B 君 「へー,それじゃあ立派な『高齢社会』じゃないですか。」

*大 坂 「そのとおり。そして,それにともなってさまざまな問題が生じてきているんだ。」

*Aさん 「具体的にはどんな問題があるんですか?」

*大 坂 「いろいろあるけれど,経済的なものに限って話をすると,この高齢者たちを誰が経済的に支えるかということが大問題になっている。かつては同居が当たり前で,お年寄りは子どもに支えられて生活していたのだけれど,核家族化の進展で独り暮らしのお年寄りが増えてきてね,さまざまなサービスを公的な機関が行う必要が出てきているんだ。」

*B 君 「別にいいじゃないですか。身寄りがないお年寄りは公立の老人ホームに入ってもらえばいいし…。」

*Aさん 「それに,お年寄りの人たちは今まで十分社会に貢献してきたわけだから,医療費とか公共料金とかは無料にしてあげてもいいんじゃないですか。」

*大 坂 「それはそのとおりだ。しかし,そのお金は誰が出すんだい。」

*Aさん 「それは…」

*大 坂 「結局は,働く人たちの税金なんだね。そこに問題が出てきた。」

*B 君 「どんな問題ですか?」

*大 坂 「それは…」

 20〜64歳人口が65歳以上の老年人口に対する比率を見てみると,1985年に老人1人当たり若年者6.6人であったのに対し,西暦2000年には3.9人になり,このままで行くと2015年には2.4人になるだろうといわれている。(東京法令出版社『フォーラム現代社会2006』より)つまり単純に考えると,働けるものは,2015年になると1人当たり1985年の3倍近い負担を迫られるわけである。すなわち,そこにはどうしても,"増税"の2文字がちらつかざるをえないのである。

*B 君 「なるほどね。お年寄りの面倒を見ることは大切だけれど,それだけ負担が増えるのは考えものだな。」

*大 坂 「経済的負担だけなら何とかならないこともないが,そのほかの問題も出てきてるよ。」

*Aさん 「たとえば?」

*大 坂 「日本の老人の自殺者は諸外国に比べてかなり多いらしい。つまり,日本のお年寄りは"寂しい"ということだよ。もちろん日本だけがというわけじゃないかもしれないけれど,18歳から24歳までの青年に対する調査で『どんなことをしても親を養う』と答えた人の割合は,アメリカの73.1パーセントに対して,日本は3分の1近くの以下の25.2パーセントに過ぎないんだ。(総理府青少年対策本部『第7回世界青年意識調査』2005年より)もちろん,子どもに面倒を見てもらうことだけがお年寄りの幸せでもないだろうけれど,日本の高齢者にはやっぱり哀愁が漂っているね。アメリカの曲ではあるけれど,このサイモンとガーファンクルの『旧友−ブックエンドのテーマ』を聞くと身につまされるものがある。」

OLD FRIENDS/BOOKENDS THEME   Simon & Garfunkel  1968

旧友/ブックエンドのテーマ サイモンとガーファンクル 1968年

 風の舞う冬の公園,2人の老人がベンチの両端に腰掛けている。それは,遠くから見るとまるでブックエンドが2つ並んでいるよう…寂しげな人生の冬−そんな社会からうち捨てられた老人の姿を歌ったサイモンとガーファンクルの傑作。『ブックエンドのテーマ』は,映画『帰郷』にも使用された。

*Aさん 「こんな曲聞かされると本当に寂しくなりますね。きっとこんなお年寄りは日本でも多いんじゃないですか?帰る家があればいいけれどホームレスだったりしたら…。私涙が出そう。でも,どうすればいいのでしょう?不老長寿の薬があるわけでもなし。」

*大 坂 「至急に対応を考えなければいけないね。社会の高齢化は待ったなしで急激に進んでいるんだから。速効性の解決策はないかもしれないけれど,当面私たちが考えていかなければならないことは,一言で言えばお年寄りが生きがいを持って生きていける社会を作っていくということじゃないかなかな。」

*B 君 「ゲートボール場をたくさん作ろう!」

*Aさん 「あんたは,本当に単純な人ね。」

*大 坂 「ま,一理あるけれどね。たとえば高校野球みたいに,ゲートボールの全国大会が毎年甲子園球場で開催されて全国にテレビ中継されたりしたら,お年寄りも元気が出ると思うよ。それはまあ無理としても,平均寿命が80歳にもなるご時世なんだから,60歳で"定年"を迎えたとしてももう20年ぐらいは人生を楽しむ時間があるわけなんだ。」

*Aさん 「20年は結構長い時間ですよね。」

*大 坂 「そうだよ。だからお年寄りには,いくつになっても"生きがい"を持ってもらわなけりゃね。そのためには,各地で高齢者の知識や経験を生かしてもらう"シルバー人材センター"の設立なども伝えられているし,今まではタブー視されていた老人の恋愛や性がもっとオープンになるのもいいんじゃないかな。」

*B 君 「先生もまだこれからじゃないですか。」

*大 坂 「怒るよ。(―_―)!!」

*Aさん 「ともかく,遊びも,仕事も,恋愛も,お年寄りにはまだまだ現役でいてもらいたいということですね。」

*大 坂 「そうそう。そしてこの歌のように"年を取ることが楽しみになる"ような社会が実現すればいいのにね。」

GROW OLD WITH ME  John Lennon 1984

グロウ・オールド・ウィズ・ミー   ジョン=レノン 1984年

 この『グロウ・オールド・ウィズ・ミー』は,ジョン=レノンが凶弾に倒れたのち,1984年になってアルバム『ミルク・アンド・ハニー』の中で発表された。生前に録音されていたデモテープであるため音質は非常に悪いが,その歌詞は彼独特の率直な美しさに満ちてもる。"愛する人と一緒なら年を取ることもまた楽しみ"−日本の老齢社会にも一日も早く,こう言える日が訪れてもらいたいものである。

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