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「ロックで学ぶ現代社会」rock meets education

第2部 『現代の政治・経済とわたしたちの生活』

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第3章 民主社会の倫理

*大 坂 「B君,日本国憲法の3大原則を述べよ。」

*B 君 「何ですか,エラそうに。」

*大 坂 「いいんです,エラいんだから。知らないの?」

*B 君 「知ってますよ。『国民主権』『戦争放棄』『基本的人権の尊重』でしょう。常識ですよ。」

*大 坂 「なるほど"常識"ですか。それでは,その『国民主権』とは具体的にはどういうことですか?」

*B 君 「それは,国民が一番偉いということでしょう。」

*大 坂 「だから,それはどういうこと?」

*B 君 「だから,えーと,それは…」

*Aさん 「B君,机の下に教科書が見えてるわよ。」

*B 君 「バレたか。とにかくそういうことですよ。」

*大 坂 「何が『そういうこと』ですか。日本の最も大切なことは,国民の選挙によって選ばれた議員が集まる国会で決まるということだね,早い話が。でも,これはいつ始まったことだろう?」

*Aさん 「日本が戦争に負けて以後のことでしょう?その前は,『天皇主権』だったんじゃないんですか。」

*大 坂 「そのとおり。だけど,世界中で『国の主は国民』という考え方が出てきたのはいつのことかな。」

*Aさん 「…………。」

*大 坂 「やっぱり,一番はっきりしているのは1789年に始まったフランス革命からだろうね。民衆が立ち上がって王様や貴族を打ち倒し,自分たちの政府を作ったんだ。」

*B 君 「つまり,力ずくで手に入れたっていうわけですね。」

*大 坂 「言葉は悪いが,そういうことだ。漢字で『革命』というのは,中国で天から支配権を与えられていた王朝の徳が弱まったので,天がその命令を改革して別の人物(王朝)に支配権を与えるという意味なんだが,英語でrevolutionというのは"くるっと回る""ひっくり返る"という意味の言葉のrevolveからきているんだ。つまり,支配されていた人たちが新たに社会の支配者になる,社会がひっくり返るという意味なんだね。そこにはどうしても"力ずく"にならざるをえない側面があるね。」

*Aさん 「でも,そんなのいやだわ。何だか怖いもの。」

*大 坂 「そうはいっても,そういう歴史がなかったら日本にもまだお殿様がいて,我々は額に汗して働いて高い年貢にゼーゼーいっているかもしれないよ。"革命"というと何か血なまぐさいものを感じるけれど,結局はその土地に暮らしている人たち自身が自分たちの運命を決めることができる社会をつくるということだろう。これは,民主主義の基本的なルールですよ。ちょっと,この曲を聴いてみてください。」

POWER TO THE PEOPLE   John Lennon 1970

パワー・トゥ・ザ・ピープル   ジョン=レノン 1970年

*B 君 「ずいぶん元気のいい歌ですね。」

*Aさん 「だけど,何だか怖いわ。暴力的で。」

*大 坂 「確かに,この曲はかなり共産主義的なニュアンスを持って歌われているからね。手に角材を持ってヘルメットをかぶって,タオルで顔を隠してデモしながら歌っているようなところはあるけれど,それはこの際考えないとしても,結局は国民主権というのは"power to the people" ということじゃないのかな。」

 功利主義哲学の祖イギリスのベンサム(1748〜1832)は,快楽や苦痛は客観的に計量可能なものであり,人生の目的は「最大多数の最大幸福」の実現であるとした。(参考:ビートルズの『ヘイ・ブルドッグ』"Hey Bulldog" 1969 には『ある種の幸福は,マイルの単位で測ることができる』という功利主義的な歌詞がある。) それを政治思想に敷衍するならば,民主主義とは『一人でも多くの人々が,少しでも多く幸せになること』ということではないだろうか。その意味で『民衆に力を』というスローガンは,民主主義の基本理念とも絡み合う。

*Aさん 「でも,それだけが民主主義ではないでしょう?」

*大 坂 「もちろんそうさ。まだ,『基本的人権の尊重』という非常に重要な項目があるね。」

*B 君 「それがイマイチよく分からないんだけれど,結局『基本的人権』というのはどんな権利なんですか?」

*大 坂 「簡単に言えば,『自由であること』『平等であること』『健康で文化的な最低限の生活を送ることができるという"生存権"が保証されていること』『労働の場において,団結権や団体交渉権などの"社会権"が保証されていること』などが挙げられるだろうね。それぞれが重要なテーマであるけれど,特にここで考えたいのは人間は皆平等だってことだ。」

*Aさん 「そうですね,"差別"の問題はあとを絶ちませんものね。」

*大 坂 「差別にもいろいろある。グローバルなものを挙げれば,人種差別とか,民族差別,日本での部落差別など巨大なテーマがたくさんあるけれど,最初はもっと身近なものに目を向けてみたいんだ。」

*B 君 「身近なものって言うと?」

*大 坂 「たとえば,男女差別なんかはどうかな。」

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